つちだま

はじまり

　惣菜の臭いってこれやん…。入学式のとき隣の子がチラチラ見てきたのって絶対私が唐揚げ臭かったからやん…。
　いや、ほら私、道民だし？普段、サータアンダギーなんか食べないし？それに見た目はそこそこサータアンダギーと唐揚げって似ているし？今朝は急いでいたから気づかないのはわかる。
　だとしても臭いで気付け私。花粉の馬鹿っ。
　しかもこの唐揚げ、近所で有名な「激くさうまニンニクたっぷり唐揚げ」だ…。ポリ袋に入ってはいるが、それで臭いを完璧に封じ込められるわけもない。
　というかお母さんなんでサータアンダギーと間違えて唐揚げを渡してきたの。
　沸々と間抜けな母への怒りが湧いてくるが、今の今まで唐揚げとサータアンダギーの区別がつかなかった自分が責められることではない。　　結局のところ、血は争えないのだ。
　「あれ？なんかさっきより臭いが強くなった気がする。あ、この臭いきっと激くそうまニンニクたっぷり唐揚げだー！」
　私がポケットから袋を出して唐揚げを確認したせいで、臭いが解き放たれたのだろう。入学日の教室には似つかわしくない惣菜臭を嗅ぎ取ったひかりが鼻をスンスンしている。
　ひかりに気づかれないように急いでポケットに唐揚げを戻す。