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もらって
「これ、うちの娘のお下がりなの。どうぞ、もらって」
「はぁ…いつもありがとうございます」
玄関で手渡された品物を抱きながら頭を下げるのが日課になっていた。
このやりとりが初めてであったなら、嫌悪感を抱くことはなかった。
これでも最初は喜んでいた。うちにも娘がいるし、何より服代が浮く。
隣の家のおばさんは、よくうちに娘さんのお下がりの服を持ってきてくれる。これで20着目だ。煌びやかで決して安くはない服を毎日1着ずつ渡しにやって来る。
「また服をくれたのね、やった」
高校生になったうちの娘は高そうな服を喜んで着ているけど、何だかもやもやする。
好意でやってくれているとしても20着よ、20着。それも毎日夕方決まった時間にやって来て。何か怪しい。裏がある気がする。
前はお礼の品に美味しいお菓子をあげたけど、まさか見返りを期待してやっているなら相当卑しいんじゃないの。
何かあった時に真っ先にうちを頼るための保険をかけているんじゃないだろうか。
そう、連帯保証人とかお金の貸し借りとか。
「なんだ、またもらったのか」
仕事から帰宅した夫は、もらいたての服を着こなしファッションショーをしている娘の姿を見て驚いたような、困ったような顔をする。
隣の家のおばさんが服をくれ始めてから夫が娘へ服をプレゼントすることはなくなった。
仕方がない、娘はおばさんからもらった服の方がセンスあるって生意気なことを言うもんだから。
「あまり図々しくしちゃだめだぞ」
「してないわよそんなこと」
なぜか夫は私を睨んでそう言った。私がこっそり強請っているとでも言いたいのだろうか。
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