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「本当はさー これ、誰にも教えちゃいけないっていわれてるんだけどさ、あなたにだけ、特別に教えとくね」
「人って実は案外簡単に死ねて……」
「痛みや疲れを取るツボのように、人間が絶対に死ねる呪文ってのがあるんだ……どんな自殺よりも効果的な自殺」
「えっ、何? そんなの嘘でしょって思った?」
「嘘みたいだけど本当なんだ。だから冗談や遊び半分では、絶対にやって欲しくない」
「だからもういい。後悔はない、本当に後悔しないって思ったとき、我慢が限界に達した時にだけ試して欲しい。いや、本当はね、本当はね 使って欲しくないんだけどね」
「鏡の前に全裸姿で立って、『サイマイ サイマイ サイマイ』って3回続けて言うの。笑わないで真剣な顔をして……」
「そしたら、2時間以内にその呪文を唱えた人は死ぬ。あー 死に方は教えられないんだけど、確実に死ぬ」
「この呪文を唱えてからはもう遅い。どんなに命乞いをしようとどんな名医に頼もうと死を回避することは出来ない」
「メカニズム? それは解明されてないんだけど、本当に死ぬから」
「どう? 少し楽になった? こんな簡単な呪文だけで死ねると思ったら……」
「人はね、こんな簡単な方法で死ねるんだよ。だからさー 今すぐ 判断する必要はないんじゃない?」
「もう少し、もう少しだけ頑張ってみてさ、本当にダメだったときに、最後の手段でこの呪文を唱えてみたらいいよ?」
「死ねるって分かっていればもう少し頑張れるんじゃない? もう少し生きてみようと思えるんじゃない?」
「えっ? 私が誰だって? 」
「ああ、私は、名前を名乗るような人間じゃないの。でもね、あなたの気持ちはすっごく分かる。ある意味 先輩だから……」
「ただ、私は、あなたに触れることも出来なければあなたに触れてもらうこともできないんだ。判断を間違えたのかもね。サイマイなんて唱えるんじゃなかったよ」
「今思えば、辛いこともあったけど、楽しいこともあったなって……我慢してればもっと楽しいこともあったのかなって……」
「これは、ただ 私個人の考えだから、1つの意見として軽く聞き流してもらってもいいんだけど、もう少しさ、生きてみてもいいんじゃない?」
「あと2年、いやあと1年頑張ってみてさーそれでも生きてくのが辛いと思ったらサイマイを唱えればいいんだから……」
「あなたは死ねないわけじゃない。いつだって死ねるんだよ、だからそんなに自分を追い込む必要はないよ」
「私は、それが言いたかっただけ。だからさ、ココアでも飲んでさ、今日はゆっくり休みな~」
「そろそろ時間だから、じゃあねー 突然現れてごめんね~」
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