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「お前たちをどうするか、じっくり考えてからまた来てやる。……生きて帰れると思うなよ」
すでに芦間さん、秋浜、圭介達を殺している犯人。その言葉には、脅しなんかではない凄みがあった。……殺される。このままじゃ、二人とも殺されてしまう!
「私も、スマホ取られちゃったの……。有沢、どうしよう」
恐怖に震えた声で、来栖川が言う。
その時、倒れたまま顔を上げた僕の視界に、あるものが飛び込んできた。準備室の出入り口の対角にある、片付いた低い棚。そこに、黒い物体がポツンと置かれていたのだ。
……圭介のスマホだ!やはり、ここにあったんだ。圭介はやっぱり、美術準備室へ来る前に、秋浜に会ったんだ。学校の中で、二人は会った?なぜ、秋浜は学校にいたんだ?犯行現場は、学校?
ミシ……ミシ……。
美術室の床が軋む音が聞こえる。犯人が、教室から立ち去ろうとしているのだ。
ちょうどその時、僕の体中に激しい電流が走った。痛みなんかではない。バラバラだったパズルのピースが、一気にピタリとはまったような。感覚としては、それに近いものだった。
(千雪ちゃんは、同級生に興味ないもんねー)
(先生、右手どうしたの?)
(ある漁村にやってきた若者がいてさ。村人からも好かれるようになったんだよ。だけどそいつ、夜な夜な村人を殺してたって話)
(有沢くんは、付き合ってる人いるの?私は……どうなんだろう。自分でもよくわからなくて)
(10年ちょい前か。その日、月島先輩は仲の良かった同級生に告白されたらしんだ。だけどな、その後の昼休みのことなんだ。先輩が、屋上から飛び降り自殺したのは)
遠ざかる犯人に向かって、僕は大声で叫んだ。
「林先生!」
来栖川が、キョトンとした顔で僕の方を見た。
「……え?林、先生ですって?」
第8章 「対峙する闇」
ー了ー
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