第一章 一話 誕生

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第一章 一話 誕生

 先程、僕の子どもが生まれた。性別は女の子で体重は約三千二百グラム。妻の(れい)はベッドに横になっている。  看護師が赤ちゃんを抱いて、 「田島さん。待望の赤ちゃんよ」  言いながら、僕に抱かせてくれた。 「赤ちゃんのお名前は?」  そう言われ僕は怜と顏を見合わせた。赤ちゃんを怜と一緒に寝かせた。 「名付けの本を見てみるよ」  名前を決めていなかった理由は予め性別を訊いていなかったから。男の子だったらこの名前、女の子だったらこの名前にしようということも考えていなかった。 「わたしも見たいから持って来て?」 「ああ、わかった」  女性看護師は、 「決まったら教えてください」 「はい」  と、返事をした。  僕の名前は、田島亮(たじまりょう)、二十六歳。妻の怜は二十四歳。知り合ったのは三年前の秋で怜が僕の勤務先である大手スーパーマーケットに転勤してきたのがきっかけ。  最初の内は、恋愛感情どころか会話さえなかった。話すようになったのは同じ部門になってから。デイリーという部門で、日配ともいう。扱っている商品は主にパン・アイス・冷凍食品・卵・牛乳等・豆腐等だ。僕は怜が転勤してくる前は平の正社員だった。もちろん、上司もいた。それが怜が転勤してきてデイリーの主任になって彼女の上司になった。ちなみに僕の上司だった人は本部に転勤となった。  僕は人見知りするところがあるので、彼女にはなかなかなじむまで時間がかかった。でも、怜は積極的なタイプでどんどん話し掛けられた。仲良くなれたのは彼女のお陰と言っても過言ではないだろう。  *****  僕は妻に、 「一旦、帰るね。名付けの本とあと何かほしいものある?」  怜は出産の疲れが取れていないのだろう、ぼんやりしている。 「う、うん。お茶が飲みたいな」 「わかった。昼ご飯は弁当買ってここで食べるよ」  彼女は笑顔を浮かべながらうなずいた。  僕は一児の父になり、怜は一児の母になった。彼女には言っていないけれど、三人くらい子どもがほしいと思っている。怜の体力が回復したら言ってみようと思っている。とりあえず自宅とコンビニに行こう。そう伝えて僕は病院をあとにした。
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