『私』の夢夢で候う②

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 私は積まれた古本でタワー状態になっているものの中からイタズラをする本を選ぶことにした。  そして、そのタワーの真ん中辺りにある背表紙の厚い本に目をつけた。  私がその本を思いっきり引き抜いたのでタワーが崩れるのを覚悟したが、意外とバランスを保っていた。  我ながら見事な手腕に感心した。  でも、ホコリが大きく舞ったので目に滲みて大変であった。  しばらく、咳が止まらずに苦難したが本を開くことには成功した。  どうやら、手に取った本は哲学者たちの紹介本らしかった。  写真にうつる哲学者は学者のくせに顔を明後日の方に向けていたり、パイプを吸っていたりと気取っていた。  私はしたことがないが偉い人の写真に落書きしたくなる気持ちが今なら分かる気がした。  なんかこう、カッコつけている人間を見るとイラッとするというか…。  そんなことを思いながらパラパラと本の紙をめくっていると一部分だけ破かれたページを見つけた。  つまり、この本は前にも私がイタズラしたことがあったようだった。  そして、思い出した。  これは私が初めて哲学というものを知ることになった本であった。  破かれたページには哲学者デカルトの『我思う、ゆえに我あり』について書かれてあった。  さらに、思い出した。  私が、この言葉を見て体中に電撃とシビレが走ったのだった。  そうだった。これに出逢ったことで私の内側から『アレ』が生まれたのであった。  本を開いたまま私が震えていると天井からズドーンとなにかが崩れ落ちてきた。
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