『私』の夢夢で候う①

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 ドアの鍵を開けて慎重に部屋を出る。  戦況がどうなっているか分からない現状では何かあってもすぐに逃げれるように、来た道の安全を確保しながらゆっくりとリビングに向かった。  目的地に到着すると両親はそこにはいなかった。  どうやら、ふたりとも家の外で憂さ晴らしをするために出かけて行ったらしい。  私はひとまず身の安全を確かめて次の行動へと移すことにした。  最初に私がやるべきことは戦場の後片付けであった。  別に親に頼まれてやるわけではなかった。ただ、ふたりが帰ってきたときに戦場跡を見て再び険悪な雰囲気になっても困るから元通りにするのである。  幸いにして、今日はまだ戦争の被害が少ない方であった。  もし、御膳の上にグラスでもあったら父がそれを投げて割っていたであろう。  ガラスは危ない。撤去しそこねたら後で痛い目にあう。要は、戦後の地雷と同じだった。戦いが終わってもそれは厄介な存在になる。  今回はその心配をしなくて済んだのであった。  しかし、ティッシュは散らかっていた。これは母の仕業であった。あの人はパニックになるとティッシュを次々に出して相手に投げつける。  今頃、新しい弾(ティッシュ)を買いに行っているのだろう。  すべてを片付けたらすでに昼が過ぎていた。  私の腹が鳴ってまだ朝食を取っていなかったことに気づく。  もちろん、親が用意をしているはずがなく自分で用意するしかない。  なので、冷蔵庫から昨日の晩飯のおかずを取り出す。  今日はこれを温めて食べればいい。後はご飯だった。  しかし、私が炊飯器のフタを開けてみるとご飯は炊きあがってはいなかった。
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