1人が本棚に入れています
本棚に追加
そのぶつかって来たラジコンカーとは私が見覚えのあるものであった。
赤い車体のダンプカーでタイヤは大きくゴツくてかっこいいオフロード用である。
これは子どもの頃、誕生日プレゼントとして父から貰ったラジコンカーであった。
当時の私は荷台部品も操作できるこのラジコンカーを夢中になって遊んだ記憶がある。
私は懐かしさを覚え、手に持って見てみようとした。
しかし、触れる前に赤いダンプカーは私から逃げて暴走をした。
赤いダンプカーは他の車や建物にぶつかっては自分の車体を傷つけて暴走を続けた。
私はその暴走を止めようと追いかけた。…でも、なかなか追いつかない。
その最中、いつの間にか周りの全ての建物の屋上に三味線を持った日本人形と思われし女たちが現れていた。
三味線を持った女たちは前髪が長いというわけでもないのに顔は影で見えなかった。
チンテンチンテンジャジャジャン♪
べべべンべべべンべンべべンべン♪
もし、彼女らが引く三味線の音を文字で表現するのならこのように濁音が混じって不快な音である。
それもそのはず、彼女らはとにかく大きい音を出すことしか頭にないらしくて三味線の弦をバチで乱暴に打ち付けていた。それは彼女らの手首が心配するほど激しく動いていた。
何重にも不快な音が交わるのは聞くに耐えられなくて私は耳を塞いだ。また、視界が揺らいで思うように動けなくなる。
目の前を進む赤いダンプカーも同じようにふらふらと動いて辺りに衝突を繰り返している。
私は立っていられなくなり、後ろに倒れ込んだら、突如できた崖に落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!