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「金以外に何があんだよ」
にべもなく返され、コウキは口ごもる。
半年前、心労を理由に円満とはいえない退社をブチかました先輩は、存外元気だった。
心配して会いに来た後輩へ、こうもつっけんどんに言い放てるくらいには。
最後に見たときよりも、かなり血色がいい。
目の下のクマはきれいになくなっている。
それもこれも、退職後すぐにみつけたという新しい仕事のおかげだという。
ここは深夜のファミレス。
客はコウキと先輩の2人連れだけだ。
チビチビとサイドメニューを頼みつつ、ドリンクバーだけはやたらハイペースに回しながら、積もる話に花を咲かせている。
先輩の今の仕事は、プロゲーマーだという。
コウキが「格ゲーかなんかで対戦して賞金もらうんスか?」と尋ねると、先輩は首を横に振った。
「読んで字の如く、ゲームする人だ。
それ以上でもそれ以下でもねぇ」
「じゃあ、デバッグとかテスターみたいな?」
「そんな面倒なことはしねーよ。
フツーにゲームで遊ぶだけだ」
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