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新婚旅行も行ってなかったから、この機会にイイ飯イイ宿にしようと、ラグジュアリーなところをとった貴方。
締め切りを前倒しして、捻出した時間。
いつもは無精髭にジャージ、髪や身なりに頓着せずアトリエで作品作りに没頭する貴方。
久し振りに髪を切り髭のない貴方は、見違える程イイ男になったけど、まるで借りてきた猫みたい。
給仕に鯱張る貴方。
普段のままでいいのに、何だか挙動不審。
テリトリーから出たから緊張してるの、猫さん?
将来売れるかどうか分からない自称アーティストに、娘はやれないと親に反対され家を出た私。
それから大分経ち、生活の見通しはたったが、やはり不安はつきまとう。
私の実家は、今いる様なラグジュアリーなところを利用していた家庭。小さい時からよく連れて行かれた。
だから、そんなに肩肘張る貴方が見てられない。
ここはリラックスする空間なのに、私を楽しませてくれる為に、無理をしている貴方。
私は2人きりの時間を持てるなら、家でも良かった。
貴方は家だと仕事が頭によぎると言った。
それ位今は作品の人気が出て、仕事が舞い込んでいる。アトリエを借り人を雇うまでになったけど、反比例して2人の時間が無くなった。
寝食を忘れる位、真剣な表情で作品に向かう貴方を見るのが好きだった。
今はそれが遠く感じる。
狭い部屋で仕事終わり、先に布団に入ってた私の隣に潜り込む貴方。
私が作ったサンドイッチやおにぎりを、目の前で仕事の合間に頬張ってた貴方。
あの頃は金銭的に満たされなくても、充実してた2人の仲。
今は何かが欠けてる。
その何かを見つける為、此処に来た私と貴方。
私達はこのGoToで、それを取り返せるだろうか?
(完)
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