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ギター女子は勇気が出ない
屋代 光は、ごく平凡な高校生のはずだった。背が平均よりやや低く、髪がストレートパーマをあてたかのように真っ直ぐで艷やかな長い黒髪であることを除くと、これといった外見的な特徴も無い。
転機が訪れたのは、高校一年生の秋。文化祭のことだった。ステージに立つ同じクラスの男子で構成されたバンド。なかなかテレビには登場しない、ややマイナーなアーティストのコピーソングは、めくるめくカラーライトが踊り狂う体育館の中を熱狂の渦に変えた。その中心でギターを抱え、シャウトしていたのが通称シノこと、篠川 煌紀である。
光は、衝撃を受けていた。百面相していたように見えたのは、ステージの照明のせいではない。両親は公務員と専業主婦。歳の離れた姉は既に銀行員と結婚して家を離れている。そんな家庭環境で、慎ましく生真面目な学生生活を送っていた光の中に、稲妻が走り抜け、これまでの固定概念で踏み固められた硬い地面に大きな地割れが起こったのだ。
これは、恋。
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