ギター女子は勇気が出ない

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 縁にとって予想外だったのは、光の歌詞だった。弾けんばかりの恋心を初めから諦めて閉ざしている。きっとこのステージでは、もっと大胆な歌を歌って、シノに何かを届けようとすると踏んでいたのだ。 「だって。好きなのは私だけだって、分かっちゃったもん」  光は完全にラブソング。対するシノは、全く恋愛とは関係のない歌だった。ただ、風景を追いかけるような歌詞で。疾走感はあるものの、彼にしてはメッセージ性が薄い。光は、わざわざシノがこのステージのために書き下ろしていると聞いてから、期待に胸を膨らませていた。が、中身がこれなのは心底がっかりしていたのだ。やはりシノにとっては、ただのクラスメイトとの交流の場にすぎなくて。光のように、一世一代の告白の舞台とはならないのだろう。 「確かにあの歌詞は……よく分からなかったよね。シノは何を言いたかったんだろう」  縁も口を噤んでしまう。  その時、ふと光が歌を口ずさみ始めた。音楽を始めて以来、光は歌を覚えるのが得意になったのだ。それも好きな人の歌ならば、尚の事。 「堤防沿いの工場の 横に折れて青い橋 突き当たりの公園のブランコ ……待ってる 二人乗り」
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