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光は言われた通りにブランコに腰掛ける。シノは、そのブランコを揺らし始めた。幼い頃に戻ったようで、光は恥ずかしくなってしまう。好きな人がごく自然に自分の背中に触れている奇跡。触れられたところだけに熱が宿って、顔まで火照り始める。自分では制御できないゆらめきに運命を預けるしかない。
「あ、あの……」
「練習の成果、見せてくれんの?」
「え、嘘、でも」
ブランコは、一層揺れた。スカートがふわっと舞い上がって、それを押さえたいけれど手は塞がっている。
「止めてよ!」
「いいよ」
シノは、光をブランコごしに抱きとめた。動きの余韻が、二人のくっついた身体の間で静まっていく。光は覚悟を決めた。
「私、篠川くんが好き」
「僕も、光ちゃんが好き。一秒だけとか、そんな勿体ないこと言うなよ」
「え、なんで」
光にとって、それは予想外の返事。驚いて顔を上げると、すぐ目の前にシノの顔があって思わず目を逸らす。視線の先には、二台の自転車と、二本のギターがあった。
「ギター女子って、いいなって」
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