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という事実に、すぐに自覚することもできず、光は眠れぬ夜をしばらく過ごす。この胸の高鳴りは何かの病気ではないのかと、本気で心配する程に。
しかし、気のおけない友人にも相談することができない。どこか気恥ずかしくなってしまう時点で、それは恋愛以外の何者でもないのに、光はひたすら別のことに集中しようとしていた。
「お父さん。このギター、もらってもいい?」
「いいよ。でもいきなり、どうしたんだ?」
「(お近づきになりたい人がいるので)がんばってみたくなったの」
父親は、昔取った杵柄とやらを武器に、光に自らのアコースティックギターのテクニックを叩き込み始めた。元々、光には素質があったのだろう。水を吸うスポンジのように次々に自分のモノにしていった。
それは、あっという間にオリジナルソングの作曲。果ては、駅前で披露するところにまで続いていったのだ。
ここまで勢いづいてしまったのは、父親のせいだけではない。敢えて、悪友とは言わずにおこう。光の親友、縁の差し金だった。
「シノも自分で歌を作っているらしいよ」
「駅前だったら、シノも通りかかるかもしれないし」
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