ギター女子は勇気が出ない

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「光の歌唱力なら、シノも聞き惚れるんじゃないかな?」 「分かった! 私、がんばる!」  縁には分かっていた。光がシノに恋していることなんて、長年の友人の目は誤魔化せない。と同時に、光の急成長や隠れた才能には舌を巻いていたのだ。これは、徹底的に煽って盛り上げるしかない!と。  小柄な光がギターを持つと、子供が無理やり大人服を着たような可愛らしさがある。そして、意外にもよく通る声。見た目からは想像もつかない力強さがあるのだ。さらには、ギターを抱えた時の瞳。一昔の漫画のように、いくつものキラキラが詰め込まれて溢れている。要するに、大変魅力的で、凛々しい少女へとスイッチが切り替わるのだ。  ギターがある。歌がある。それだけで、こうも人は変われるのか。縁は唸りながら、次なる作戦を考えていた。  光は、ギターを弾きながら歌うようになったことで、形ばかりはシノの姿に追いつきつつあった。しかし、音楽という共通点を増やしたところで、まだまだ二人の距離感は変わらない。むしろ、最近は少し遠のいてしまったかもしれない。  発端はある日の昼休みのことだった。 「シノの方がカッコいいから!」
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