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スタジオの使用料は高い。高校生のシノは、バイトで貯めた金をほとんどコレに注ぎ込んでいる。
「シノ、何かあった?」
「お前は、女がギターとか音楽やるってのはダサいと思う?」
お前と呼ばれた男、祐也は、赤メッシュを入れた髪を揺らして笑った。シノには、何が可笑しいのか全く分からない。
「なぁ、来週の放課後ってずっと空いてる?」
シノは、低い声でぶっきらぼうに返事した。
「空いてるけど、何?」
「じゃ、縁にOKって言っとくわ」
「お前、女いたっけ?」
「なんでいないと思うわけ?」
シノは一旦口を閉じる。
「今日は早めに上がる」
「駅前?」
「うん」
「そろそろ声かけてあげなよ」
「うるさい」
シノが詳細を聞かされるのは、翌日の昼休みのことだった。
午後からの授業は、早速歌詞作りに充てられた。シノにとって、これはチャンス以外の何モノでもなかったからだ。
そしてそれは、光も同じことだった。黒板の白チョークを追うクラスメイトを横目に、シャーペンの芯がノートの上を疾走して、抑えきれない思いの丈を綴っていく。それはもはや歌詞ではなく、恋文だった。
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