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ここでようやく、光は気づくのだ。自分がシノのことを好きだということに。
◇
「皆様、ようこそお集まりくださいました。只今から、シノと光の歌合戦の始まりです!」
翌週の木曜日。シノ推しの女性教員が、演劇部を言いくるめて体育館の舞台を確保し、文化祭の盛り上がりの再来を予感した他の部活動も急遽休みに。元々帰宅部の生徒まで押しかけてきて、観客はニ百人にまで達していた。
「縁、私、無理」
ギターを抱えてカタカタ震える光は、小動物的な愛らしさがある。これまで駅前で知らない人達相手に歌うことはあったが、よく知っている人の前、しかもこんな大人数を前にして歌うのは初めてなのだ。
「大丈夫だよ」
縁の笑顔は人を安心させる効果があるらしい。光は小さく頷いて、軽く目を閉じた。
新しいオリジナルソングは、すっかり暗記しているため、楽譜は持ってきていない。それはシノも同じだ。今日はシノも一人で舞台に立つ。一部の女子からは、バンド編成で見たいというブーイングがあがっていたが、それはシノの周りのメンバーが何とか窘めて、静まった。元々シノは、中学の頃からソロ活動もしていたのだ。
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