ギター女子は勇気が出ない

9/14

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
私の本気 耳元で囁くの 君と居たい って言えたらいいのに 一秒でいいんだ 君の彼女のフリをして 一緒に帰ろうって 誘ってみるんだ その腕に抱きついて 嘘でもいいから 好きって言われたくなるなんて 病気でしょ でもきっと言われたら たちまち治る 諦められる 君が好き 諦めたくない 君が好き 君が好き  光が、弦の音をピタリと止めた。  外から、運動部の掛け声と笛を鳴らす音が聞こえてくるだけ。  一人、また一人とその場に立ち上がる。拍手がパラパラと響き始めた。それが少しずつ増えて、広がって、大合唱になって。  光は深く頭を下げると、そのまま逃げるようにして舞台袖に引っ込んだ。  次は、シノの番だ。    ◇ 「光、大丈夫?」  すっかり暗くなって、誰もいなくなった体育館前。上履きから靴に履き替える途中で機能停止していた光を、縁は乱暴に揺さぶっていた。 「私、勝負に勝って、恋に負けたのかな」  光はぼんやりとする頭で、先程までのことを思い返していた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加