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黄金から紅
扇の中心にセブナ、以前集会所でネイトンの帯を見せてくれたショナムは、右に二人置いて座る。その反対側に剣の間に合ったクロン、左の端にイエナ。
右の端には、剣を肩に凭せ掛けた長身のティエンがじっと目を閉じている。
スベラを含む残りの十一人はイシュリムの結界の中に座り、戦況を見守る側だった。
なぜ女児が扇の中心なのか、イシュリムの村の中でも異論が起きた。
「剣の色を見よ、黄金色の奥にほのかに紅が揺らめいておる。これは紛れもなく強い証」
イシュリムが言い放った刹那、セブナは三間(5.4m)ほども離れたところに立っている大木を一刀両断にした。
「早く来ないかな」遊び仲間を待つかような楽し気なセブナの声に、一同から笑いが漏れた。みなセブナの剣の腕をすでに認めていた。全員がセブナと同じ位置から木に挑んだが、斬ることはかなわず、傷をつけることができたのも数人しかいなかったからだ。
「おいおい、こんなところに女とは、いったいどうしたことだ」右の扇の中程にいた男がうろたえた声で腰を上げた。
「お前は何を言っているんだ」隣に座る男が立ち上がって近づいていく。
「これが見えないのか?」
「あ……いや、まさしく女だな。ここは危ないから村へ案内しよう。魔物がやってくる。これから闘いだから早く入ろう」男は村を指さした。
ふたりの男がこちらに向かって歩いてくるが、そこには何も存在しない。男たちは剣を抜いて静かに立ち上がった。抜いたばかりの剣は、まだ銀色の光を放つだけだった。
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