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開戦
気合とともにショナムが真横に剣を払い、黒い塊が飛び散った。それを合図に、黄金色に輝く剣を引っさげた男どもは雄叫びを上げ、扇の輪を広げるように走った。荒野の大地にもうもうと土煙が巻き起こる。
「我らを見くびるではないぞ!」ティエンの声がする。イエナが注視する中、ティエンは大上段に構えた剣を袈裟に振り切り、返す剣で滑らかに横になぎ払った。黒い塊が瞬時に宙に飛び散った。
「我が部族の敵討ちじゃ!」クロンも走り、飛び退り、追いかけ、剣を振りまわした。千切れた黒い塊は派手に宙を舞った。
セブナは野生の小動物のように走り回り、飛び上がり、しゃがみ込み声を張り上げて剣を振るった。セブナの斬って捨てた魔物だけは、ほかの誰より遠くで千切れ飛ぶ。
遅れてはならじと、イエナも剣を片手に耳を過ぎる風の音を聞いた。大地を斜めに照らす朝日の中、息を弾ませ見えない敵を追った。
「深追いするな! 村と結界から遠ざかってはならん!」イシュリムの声が聞こえる。
見えた!
異様なほどに真っ黒なそれは、定まった形を持ってはいなかった。どちらが前でどちらが後ろなのかさえわからない。しかし、見えているということは相対しているということ。
その塊が倍ほども高く上に伸びた。斬ってくる! 恐怖で総毛立つ。
イエナは剣を後ろに引くやいなや片膝をついた。黒い剣が猛烈な早さで頭上に降ってくる。左へ避け振り切った。剣は手がしびれるほどの衝撃を残し、黒い塊が千切れて飛んだ。
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