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シャメーナの衣
〈イエナよ、見事だ〉
「今度は本物のシャメーナ様ですね」
〈いかにも〉
「魔物はイシュリム様の村へは入らぬ、と教えてくれたのはシャメーナ様ではありませんか」
〈よく見抜いた〉
「しかしシャメーナ様、遅うございました」
踵を返して歩く先に、うつぶせに倒れたクロンが見える。幼い頃からなにをするにも一緒だった。朝から宵まで、親よりも長く一緒にいたような気がする。
「クロンが死にました」
〈お前は見たのか?〉
「はい、何をでしょうか」
〈クロンの死に顔を見たのかと訊いておるのだ〉
「いえ、まだです」倒れ伏したクロンの姿が近づいてくる。
〈私がお前とクロンに贈った衣は、我が宿りし木の繊維と生命力で作られたもの、私がただの衣を贈ると思うか〉
「はい?」
〈今までの死者はどうであった〉
「今までの、死者でございますか?……身体が……真っ二つに」
〈クロンはそうなっていたか〉
「いえ、繋がっております」クロンの元にたどり着いた。
〈衝撃で気を失っているだけだ。私はピシュナ神に叱責されるやもしれぬ。人の生き死にに手出しをするなと〉
「シャメーナ様、感謝いたします」しゃがみ込み、クロンの肩を揺すった。うめくような声が小さく聞こえた。
〈その衣は十昼夜ほどしかもたぬであろう。長引くようであれば過信はするな。二人分をこしらえるだけで、私が地上にとどまる期間も少し縮んだやもしれぬ〉
シャメーナが少し笑ったような気がした。
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