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終結
「おじちゃん! イエナおじちゃん!」セブナが風に前髪を立てて走ってきた。
「どうしたセブナ」
「減ってきてる!」飛び上がり剣を振り切ったセブナが結界に走る。むろん、黒い塊が弾けて飛んだ。イエナも後を追った。
「みんなを結界に呼んで、じいちゃん!」
「どうしたセブナ!」イシュリムが眼光鋭く立ち上がった。
「魔物が減ってきてるよ! もう湧いてこない。あとはもう」真っ直ぐに腕を伸ばしたセブナがイシュリムを指差す。
「あたしとじいちゃんでやれる。これ以上死んじゃったらダメだから!」
「戻れ! 全員結界に戻れ!」イシュリムが声を張り上げる。イシュリムの声は不思議だ、どんなに遠くにいても聞こえてくるのだ。全員が走り始めた。
「イシュリム様!」異変を案じた様子のティエンが、血相を変えて走ってきた。
「いかがされましたイシュリム様!」
「イシュリム様!」
「闘士がまた減ったか……」イシュリムが抜いた剣は、すでに光を帯びていた。
「魔物が減ってきてるよ!」振り返ったセブナが声を上げる。
「まことかセブナ」ティエンが肩を掴んだ。
「本当だよ父さん。もうふたりでやっつけちゃうから。じいちゃんの闘いを、みんなもう一度見たいでしょ?」
それは誰しも見たいだろう。あれほど秀抜な闘いぶりを今一度。
「イシュリム様と?」
「そう」
「イシュリム様、よいのですか?」ティエンが不安そうな表情を浮かべた。
「セブナがそう言うのなら、ふたりでやれるであろう。今度はもう止めるな」
イシュリムが結界から足を踏み出した。
「みなはここで見ておればよい。さて、行くか」セブナの頭をひと撫でした。
「うん。行くぞじいちゃん!」セブナが剣を真横に一振りして走り出した。イシュリムがのしのしと歩きだした。黄金色の奥にほのかに紅が揺れる小ぶりの剣と、まさに紅に燃える長い剣が荒野に舞った。ふたりの剣の先で、それは見事なほどに黒い魔物が弾けて飛んだ。
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