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口頭伝承
この闘いは七日の間くり広げられたと聞きました。そして彼らは勝利したのです。しかし、生き残った剣の勇者は僅か八人、いかに過酷な闘いであったかが分かります。
そののち彼らは、疲れの癒えぬまま馬を走らせ、村々を回りました。被害を受けたいくつかの村がすでに魔物によって滅ぼされていましたが、生き残った人々は彼らが引き連れて村を統合しました。
ティエンが率いていた人たちも含め、魔物の手から生き延びた人々の内の多くが、イエナの村に居着きました。曽祖父イエナがそれを望んだからです。
そして残りの人たちはシャーマン・シャメーナの村に向かいました。子を持つものや老いたものは、水と穀物の豊かなシャメーナの村が良いだろうとイエナが判断したからです。シャメーナを始めその族長も快く迎えてくれたそうです。
ティエンの一家とスベラはイシュリムの村に残りました。再び魔物が現れた時、この荒野の部族を守るためです。もちろん、スベラの妻と子もそれに従いました。約束通り、イエナとスベラの妻子は対面しました。
これが、曽祖父イエナの語ってくれた物語のすべてです。
イエナは必ず付け加えました。ミランダよ、もしも黒い魔物がやってきたら、陽の昇る方へ十一昼夜進め。その川の畔に、胸の高さほどの石囲いの村がある。そこにネイトンから受け継いだ剣はある。お前にはきっと合うに違いない。その剣を手にとって闘えと。
子も孫もたくさんいる曽祖父がなぜ好んで、それも女児であったわたしにその話をしてくれたのか、今は分かるような気がします。
誰が目の前に立っても騙されてはならぬ。奴らはシャーマン・シャメーナにさえ化ける。その時頼りになるのはミランダ、お前の心である。お前の人を愛する心と闘おうとする勇気は、必ずや真実を見いだすであろう。
ミランダよ、光を掲げ、闇をはらえ、と。
すべてを見通したような曽祖父イエナの言葉を噛みしめながら、わたしは今、ミネラと共に陽の昇る方へラクダを急がせています。
イシュリムがいた場所へ、荒野の守り神たちが住むという伝説の村へと。
─fin─
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