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「うええぇぇん」
これが大学生の泣き方か?まるで小学校低学年の女の子じゃないか「おい、春香?わかったから陰キャ卒業出来るように手伝うから、もう泣き止めよ、な?」
「うええぇぇ、お腹が空いたよぅ」
泣きじゃくってる振りしてチラッとこっち見やがった、完全にウソ泣きだなこれ。
はぁ〜
アカナメの作ったカレーをよそってあげるとすっかり泣きやんだ。
目の前にはカレーの乗ったちゃぶ台を挟んで中学生みたいだけど大学生の女の子と裸エプロンの女の人みたいな妖怪が挨拶を交わしている、が、自分の部屋だというのに着替えるタイミングを失いパンツ一丁で正座していた俺は居心地の悪さに苦笑するだけだった。
「このカレーめっちゃ美味しいです」
「えへへ、そうですか〜?」
「アカナメさんて…」
「あっ私、滑流って言います、宜しくお願いします」
「あっ私、桜井春香です」
「滑流さんて料理上手なんですね〜」
「えぇまぁ、これでも五十年くらいは密偵やってるんで、ある程度の人間の真似は出来ますよ」
「五十年?じゃあ私のひいお婆ちゃんの時から密偵してるんですね」
「え?桔梗様のひ孫さん?」
「そうです!」
「先輩、お水下さい」
「え?水?」
喋りながらもカレーを掻き込んでいた春香だが汗がダラダラ流れている、激辛カレーというのは本当だったんだろうか?たいして辛くはなかったんだが、一応グラスと冷蔵庫の中も匂いを嗅いでから冷えていた麦茶を入れてあげた「先輩、いつまでパンツ姿なんですか?」そう言われ、ゲンコツを食らわしてやりたい衝動を抑えながら比較的臭くない服を着た。
「ちょっと臭いですね」
「ほっとけ!」
今から洗濯機を回そうとしてたところにこの騒ぎが起こったのだ、俺だって好きで臭い服を着てる訳じゃない。
「すみません私が舐めたせいで…」
「あ…」
妖怪だって分かっているのに、見た目が完全に女の人が申し訳無さそうにうなだれていると逆に後ろめたい感じになる、慌てて話をそらした。
「春香のことを監視対象って言ってたみたいだけど?」
「それは…」
「それは私が妖怪相手の御庭番の次期頭首だからだよ」
「次期頭首?」
「はい、春香さんの安全の為に監視していたのですが急に妖力が捉えられなくなって慌てて探していたんです」
「あはは〜ごめんね〜」
「それって結構重要な機密事項だったりする?」
「何で目を逸らした?」
「大丈夫だよ、先輩は滑流さんの栄養源として報告されてるんだから…他の人に言わなけりゃだけど」
もちろん言うわけない
「ちょっとまて!栄養源としてって、俺はこの先ずっと生臭いまんまなのか?」
「それは、舐めたあとすぐ洗えば臭わないので」
「昨日は気を失ったのでシャワーに入れなかった…と」
いや、まてまてまて何で栄養源確定みたいな話になってるんだよ?
「先輩がタバコなんか吸ってるのが悪いんでしょ?」
「そもそもお前が妖力封印とかしなけりゃこのアカナメもこの街をウロウロしなかったんじゃないの?」
「だって陰キャを卒業したかったんだもん!」
「友達と楽しくお喋りしたり、放課後流行りのスイーツとか食べに行きたかったんだもん」
「だからお前は陰キャではない!」
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