第1章 シンデレラとの出会いは、オフィスビルの階段で

2/39
6721人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
「……この摩天楼からの眺めも、いい加減見飽きたな」 自社ビルの高層階から眺める、社長室(プレジデントルーム)からの景色も当初は下界を制覇したようにも感じられはしたが、最近ではあまり面白味のないものにも思えてきていた。 「……つまらない。仕事も軌道に乗ってしまえば、始めたばかりの頃の、いつどうなるのかもわからないような、あのヒリヒリとする緊張感もない……」 メインストーリート伝いのガラス張りの壁面から見下ろす、暮れ始めた街の夕景に、ふーっとため息が漏れ出す。 「くだらない」 吐き捨てるように独り言を呟くと、 「一条社長、今夜はこれから経営コンサルタントの方との会食の予定ですので、そろそろ御支度をお願いします」 ノックの音とともに秘書が社長室へと入って来て、そう告げた──。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!