戒め(いましめ)の面

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戒め(いましめ)の面

 私は、鳴本紗季(なるもとさき)26才、身長153㎝、体は細く、髪は真っ黒なロングで、目の上よりも短い前髪、黒目がちな瞳に、ちょこんと小さい鼻、ふっくらした小さな唇、色白で頰の血色が良い、ふっくらモチモチ肌な丸いフェイスラインをしていて、可愛い童顔だと男性受けは良い。  しかし気が強いのが玉の傷だ。 〇×県〇×市で代々続く質屋であり、私は家業を手伝っている。    父親は、「誠治(せいじ)」58才、母親は「芽衣(めい)」56才。  両親と番頭「長倉繁雄(ながくらしげお)」28才と4人で実家に住んでいる。  父は中肉中背、二重な目、薄い唇、鼻筋が通った小さな鼻で髪は角刈り、丸い顔をしている。豪放磊落(ごうほうらいらく)な性格だが、少々神経質な面も持ち合わせている。  母は色白でスタイルが良く、ぱっちり眼の顔にロングストレートな黒髪な美人顔、優しく明るい性格だが、躾には厳しい。  長倉は、身長182㎝、服の上からでも筋肉の盛り上がりが分かる大男、細い目、獅子鼻、ぶ厚い唇、髪は五分刈りで下駄みたいな四角い顔をしており、正義感に溢れ曲がったことが大嫌いな性格だが、反面涙もろくお人好しである。   ★☆★2018年7月初旬某日★☆★  母と一緒に家の蔵を掃除していると、私は蔵から木製の古めいた箱を見つける。  木箱の蓋には「戒め(いましめ)の面」と書かれている。  蓋を開けて中身を取り出して見ると中には、金色の太い髪、青く四角ばった顔に、眉間によった太いしわ、大きく吊り上げた太い眉毛とかっと見開いた両目、太い鼻、きつくむすんだ唇から上にはみ出る両牙という恐ろし気な表情をした木製の面が納められていた。  面の裏には、紫色の紐が付けられており、その紐で縛って被るらしい。 「母さん、この恐ろしい面は何!」  と私が質問すると、代々魔除けとして玄関に飾られていたが、父が質屋の後を継いでからは不気味だからと嫌がり蔵にしまわせたという。  何でも母が父から聞いた話によると、先祖がいつ頃が分からないが、近くの修武山(しゅうぶやま)で修行していた顔見知りの山伏から頼まれ買い取った面だという。    こんな話が伝えられている。  明治時代に蔵を窃盗団に襲われ、「戒めの面も含めたお宝品をほとんど持ち去られた。当時の鳴本家の当主は、これでは店はたたまなければならないと、頭を抱えていた。  ところが事件のあった翌日の夕刻、盗みを働いた強盗団が頭領共々、店から持ち去ったお宝品を6台以上の大八車に載せて返しにきたという。  窃盗団の頭領が言うには 「お店の大事な質預かり品を、盗みまして大変申し訳ありません。恐い顔をした木製の面をわしが被ってみたのですが、 そしましたら突然頭がクラクラしだし、人様の物を盗むなんてとんでもない事をしたという思いでいっぱいで、今はとても後悔し深く反省し、盗んだお品をお返しにきました。窃盗団は解散しこれからはまっとうに生きて行きたいと思います」  と泣きながら平謝りで土下座をし続けたという。  鳴本家の店主は、 「二度と他人の物を盗むなんて悪事を今後二度としないと誓うならば、警察にはつきださないであげよう!」 「お前さんが盗んだ物を全て返してくれ、改心した気持ちに免じて今回は許してあげよう、さっさっと人目につかないように、 お帰んなさい!」 「今回の事件は、私がお宝品を別の場所に保管しなおした事を番頭が知らなくて大騒ぎした事にしとくから、安心しなさい」 「お前さん達は、私に言われてその場所からお宝品をこの蔵に大八車で運んでくれただけだと、隣近所には説明しとくよ」  頭領は、最後に面の入った木箱を返し、頭を下げなら子分を連れて帰って行ったという。  この面には、人間の持つ業(邪気)を掃除し、きれいに清めて善良な人間に変える力が備わっているらしい。  私はこれから「戒め」の面を使って番頭の長倉と共に、数々の業の強い人間の心を掃除をして清めていくことになるのだが。
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