悪夢

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悪夢

「ミサキいいいいい! 嘘だろぉぉぉぉ!!」  外は雪が彩る素敵な結婚式会場。ウェディングケーキに入刀と言うところで、なんとタカシが会場に乱入し、こともあろうに旦那に向かって突進して来たのだ。  タカシには披露宴の会場と時刻は言っていない。どうやってここを知ったのか!? まさか、結婚式場に現われる怪しい男って……!  手には包丁を持っている。もしかして、旦那を殺すつもり!?  会場が騒然とする中、すぐに警備員が駆け付けてきた。だがタカシはそれを振り切ろうとする。 「ミサキは俺の、俺の彼女なんだぁっ! 横の男にそそのかされたんだろう! あるいは親戚か? とにかく許さん! こんなの無効だぁぁぁ!!」  目は完全に狂信者のそれである。周りなど何も見えていない。私は恐怖でひざが震え出した。タカシを抑えようと他の参加者たちも加勢した。 「やめろ! 2人の結婚はもう決まっているんだ!」  誰かがタカシに叫んだが、 「そんなはずは、無いいい!!」  そう言うが早いか、なんと静止を振り切って、タカシはこちらに向かって突進して来た。 「ミサキ、本当に結婚するのか!?」 「そうよ! もういい加減にして!」 「ならば、ここで一緒に死のう! あの世で幸せになろう!」  そう言って、なんと私に向かって包丁をむけてきた。助けて! と思って旦那に目を向けると、 「助けてくれぇぇぇ!」  そう言いながら逃げて行ったでは無いか。タカシはもう目の前。殺られる! と思った私の心の中で、何かが切れる音がした。  次の瞬間、刺されるギリギリのところでタカシを交わし、裁判所から渡されたカプセルを彼の口の中に放り込んだ。 「プレゼント、受け取ってね」 「何を……、ぐっ、ぐはあぁぁっ!」  カプセルに入っていた即効性の毒薬により、タカシはその場に倒れ、そして、息絶えた。 「苦しまずに逝ったようね。おやすみなさい、永遠に」  スパイ映画のような決めゼリフを思わずつぶやいてしまったが、我に返った私は放心状態だった。
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