第1章2節 家族の週末

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僕の家族は毎週末に行く。 何故かなんて分からない。僕が生まれる前からお母さんとお父さんがそうしているからだ。 小学1年生、まだ一人で生きていくことのできない僕は両親に付いていくことしかできなかった。 例えそこで行われるなんかに興味がなくても――。 「ヤダ!」 僕は、腕を無理矢理引く母の手を振り払った。 無残にも(はた)かれ地面に伏しているはしご車(ヒーロー)を拾い上げ、僕は逃げた。 いつもは黙って付いて行く僕だが、今日だけは違った。 お母さんに大事なヒーロー(おもちゃ)を無下に扱われたからか、それとも僕の腕を強引に引くその手に嫌な感情を抱いたからか。 僕にはわからない。 でもその日はただ、逃げたかったんだ。 玄関を開け外に出た僕には、逃避行の末の自由と未知の世界が待って―― いるようなことはなく、いともあっさりと父に拾い上げられてしまった。 そのまま車の後部座席に押し込まれシートベルトで身体の自由を奪われてしまう。 「あまり母さんを困らせるようなことはしないでくれよ」 「まったく……、に着いたらにたっぷり説教してもらわなくちゃ」 そうぼやきながら出発の準備を進める両親に対して、何も抵抗できなかった。 だから、抵抗してことにした。 「私を呼ぶ声がする……」 「なに?急にどうしたの?」 「助けを求める声が……!」 「おい、どうしたんだ」 「世界中どこにでも届けてみせる、私の(はしご)を!」
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