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序章1節 「ある夏の日」のはじまり
「行ってきまーす」
僕がそう言い放った家には誰の姿もない。
それもそのはず。
なぜなら、お父さんとお母さんは仕事に出掛けているからだ。
僕の父はビンワンサラリーマンで、
異例の若さでブチョウへのシュッセを遂げたと母は喜んでいた。
そんな母もウデキキのオーエルで、
そういうのをキャリアウーマンと呼ぶらしい。
同じダンチのおばちゃんたちがそう話しているのを耳にした。
そんな訳で、僕の家は今もぬけの殻。
きちんと玄関の鍵を閉め、その鍵をキーケースに仕舞い、
更にそれを、身につけたウエストポーチに仕舞った瞬間、
僕を呼ぶ声が降ってきた。
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