序章3節 “空間”

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序章3節 “空間”

僕の記憶はそこで途切れていた。 僕はあの光景を目にしたのを最後に気を失い今この空間に居るらしい。 おそらく、お兄さんも。 「不思議だろう?」 目の前の青一色に言葉を失っていた僕に、お兄さんはそう訊きながら手を差し出した。 僕は相槌を打ちながら、お兄さんの手を掴み起き上がろうとした。 その瞬間、それまで床だと思っていた“それ”は頼りを失い、僕の身体は空転した。 そんな僕の運動の反作用で、お兄さんの身体も半周弧を描いた。 あまりの出来事に僕は呆然としてしまった。 そのときのお兄さんの顔は、宙をクルクルと回転す(まわ)る僕には確認することができなかったが、きっと一瞬呆気に取られた後すぐに笑顔を浮かべていたことだろう。 僕は必死に身体を捻ることで慣性を殺して、やっとのこと回転を止めた。 その瞬間だった。僕の視界に“それ”が映り込んだのは――。
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