序章3節 “空間”

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青一色の空間に走る一筋の光――、いやこれは光というより線。 そう、線が走っていたのだ。 上下左右縦横無尽に、軌跡に尾を引きながら走っている。 その線は僕が目で追うには少しだけ速く動いていたのだが、どういう理由(わけ)か視界から出ていかない。 僕の視界から出そうになるとその瞬間緩やかな弧を描きながらUターンし僕の視界に留まり続けている。 どうやら、お兄さんにとってそうではないようで、線に目を回している。 その線は僕にとってあまりに見慣れた(あか)い色をしていた。 やがて線は尾を引くのをやめて形を取り始めた。 その輪郭は誰がどう見ても――――“はしご車”のそれだった。
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