Florists' war

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 とんでもない新人が入社してきた──。  そんな社員の囁き声は、新入社員の玉井六三郎の耳にも届いていた。白髪に白い髭を生やした玉井は、今年で七十三歳を迎える。   就職した先は花屋だ。玉井が入社した花屋は全国に支店を持ち、その規模は日本でも五本の指に入る。  玉井の配属先は片田舎の支店ではあるが、地元の花業界では一番の売り上げを誇り、同等の実力を持つ店舗が日本中に点在している。  規模の大きな会社だ。花のプロであるフローリストとして、様々な人材が居ても不思議ではない。  それにしてもだ。  玉井六三郎は、ない。  経験者のアルバイトなら、まだ話はわかる。しかし、未経験の正社員での雇用。  玉井の指導係りに任命された春菜は困惑していた。 「玉井六三郎です。組織の発展に、力を尽くしてまいる所存でございます」  玉井六三郎は掠れ声で挨拶をすると深々と頭を下げた。 「や、山本春菜です。よろしくお願いします」  負けずと、春菜も深々と頭を下げる。  これではどちらが新人か分からない。傍から見れば巨匠と弟子のようにも見えただろう。  しかし残念ながら、春菜には玉井が一人前のフローリストになれるとは思えなかった。花業界は職場環境も厳しく、力仕事も多い。高齢である事は圧倒的に不利だ。春菜には自信も無ければ、前例も聞いたことがない。
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