Florists' war

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 春菜にとって、玉井を育てる上で問題となるのは年齢だけではない。それは春菜が戦い続けてきた、この店の体質もある。  この店はまだ新しい。統制が取れていない。本部の目が届かないのを良いことに、まだ若い名ばかりの上層部が好き放題に幅を利かせ、新人は早々に辞めていくか、お粗末な言葉で胡麻をすって出世する。  新しい店なのに売り上げが良いのも、会社の看板があってこそだ。  その中で七十三歳の玉井が上手く生きて行くことは考えにくい。 「山本さん、よろしく頼むよ」店長の斎藤はそう言って笑みを浮かべた。以前勤めていた花屋では、怠け者でプライドが高く、使いものにならない男と言われていた人間だ。面接だけは落ちた事がない、それだけが自慢の口先だけの人間だ。  今回の件も、会社の体制に疑問を呈する春菜に対しての嫌がらせだ。斎藤はそうやって自分にとって都合の悪い人間には、理不尽な仕打ちを与えてきた。  春菜は斎藤から、玉井の面接は東京の本部の人間が行ったと聞いている。雇用の理由は本人の意欲と、片田舎のメインターゲットである高齢層に向けた幅広い意見を取り入れるためらしい。  そんなわけがない。  本部の意図は、良くて世間へのアピールだろうと春菜は思った。 「断れなかったんだよ、ごめんねぇ」と言ってきた斎藤の顔は、思い出すだけでも虫唾が走る。  玉井は操り人形のように踊らされているだけだ。斎藤にも、本部にも。それを救える者は、春菜しかいない。
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