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「玉はん……聞ぃてくらはいよぉ」
「うんうん。それは大変だねぇ」
玉井は日本酒を片手に春菜を慰めていた。
「玉ちゃんさぁ、なんの花が好きぃ?」
「菊かなぁ」
「渋い! いいねぇ!」
春菜はついつい飲み過ぎてしまった。
玉井に辞めるべきだと伝えるはずが、会社の現状を踏まえている最中に、止まらなくなってしまった。
玉井は聞き上手だった。
すっかり二人の立場は逆転していた。
「このままじゃ、ダメらと思うんですよぉ」
「そうかそうか、春菜ちゃんは花が好きだもんね。そんな人達に扱われていたら、お花が、かわいそうだもんね」
「そう! さっすが玉ちゃん。わたし、花が好きなのよぉ。だってさー」
「だって?」
玉井は急に真剣な顔をした。しかしその表情に春菜は気付かなかった。
「一生懸命咲いてくれるじゃーん」
「うん、そうだね」玉井は微笑んだ。
「それを見てさぁ、誰かに贈りたい! っておもったりー、家に持って帰りてぇ! ってお客さん、思うんです」
「そうだね。春菜ちゃんも、そう思う?」
「もっちろん。玉ちゃん、わたし、花ってすごいと思うんだぁ」
「なんで?」また玉井は真剣な顔になった。
「だってぇ……」
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