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もはやここらが潮時か… 思えば、何だか知らぬうちに、生き長らえた人生だった… そんな気がする。 私に生の限界などない そんなことを言う資格は、 私にはない 私はこのまま、 "大祓詞"の言霊を発し続ける。 それがたとえ死を招こうとも、 構わない。 私に生の限界などない そんなことを言う資格は 私にはない いっそこのまま… どす黒い悪霊は、さらに邪悪な黒味を増して、私と少女に襲いかかってきた。 私は全身全霊の力で"大祓詞"の言霊を発し続けた。 しかし、もはや悪霊の悪霊たる存在には、私の言霊は通用しない… どす黒い悪霊はひと塊りになって、すでに私と少女を完膚なきまでに飲み込もうとしていた… すまない… 私を頼ってきてくれたのに… 少女には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。 しかし、この身が滅びようとも、私は全力で"大祓詞"の言霊を、死の瞬間まで発し続けるのみだ… 私に生の限界はない そんなことを言う資格は 私にはない… 視界が、どす黒い悪霊の塊一色に染まり、もはや全ては終わった… と思った… その時… 遠くの方で何かが光った… 何か… 幽玄な飛翔体が その刹那 見えた… それは一気に急降下してきた。 何だ?! しかし、自分には関係のないものだ。 何が飛び交おうと、全てはもう終わっている… 私にもう 力は無い… だが、飛翔体は、私の目前にまで近寄り、なんと、どす黒い邪悪な悪霊の塊に激突した。 それは、 何故か、 大量の傘の群れだった。 その瞬間、夥しい数の傘の群れという群れが、どす黒い悪霊を取り囲んでいた。 そして、その傘の大群の内部には、私が見知っている人たちの顔が見えた。 何だ? これは何だ?! そんなことを冷静に受け止めている暇もないほど素早く、傘の大群は、どす黒い邪悪な悪霊にさらに激突し続けた。 そして、傘の大群の内部には、私の見知っている人々の、顔という顔が、また見えた。 あの…懐かしい顔が…。
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