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大地は、慌ててその後ろをくっついて回る。
何しろ芳野は起きて数分、出かけるといっても寝ぐせはついたままだし、朝食も取っていない。というか悲しいほど何もしていない。ようやくここまできたのに寝顔を見ただけでサヨナラでは納得のいくはずもなかった。
「なあ、起きたばっかで出かけるってなんだよ。お前、明日帰るんだろ、だったら今日は二人で町の中とかさ、見せたいものもあるし歩いてみねえか。俺そのつもりで行く店とかずっと考えてて」
「昨夜は付き合うと約束したが、今日も一緒とは言ってない。俺にも予定がある」
「俺は一緒に居てーんだよ! お前、俺たち付き合ってるって自覚あんのか!?」
「そ、それは知ってる」
他人事のように答えながら芳野はずんずんと玄関に進み、大地は慌てて脇から回り込んで追い越した。
「待てよ」
体の大きい大地が立ちはだかれば前は完全にふさがれてしまう。芳野は目をそらし、顔を背けた。その顔を自分の方に向けようと大地は芳野の頬を掴んだ。
ぷに。
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