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「あー、わかった、嫌なんだろ、もういい」
「え?」
「やれねーのはしょうがねえけど、そもそも俺に興味ねえんじゃ居る意味ねぇわ」
芳野はポカンとした顔で大地を振り返った。その通じなさがたまらなかった。全部が空回りでどこまでも一方通行な気がした。
大地は踵を返すとダウンとカバンをひっつかんだ。
「帰る」
「今から? 真夜中だぞ」
「いいんだ、忙しいんだろ。また来る」
大地は大股でざくざくと玄関に向かった。芳野の足音が続くが、追いつけないように有無を言わさず急いだ。
こんな僻みっぽい態度をとるなんて最低だと思った。だが、今日は色々あって気持ちがささくれていて、このまま話せばキツイ言葉ばかりが出てしまう気がした。
車を発進させると、ようやく追いついた芳野が着崩れたジャージ姿で出てきたところだった。ミラーに映った芳野はやっぱり呆然としていた。
何やってんだ、俺。
今すぐにでも引き返したかったのに、気持ちとは逆にアクセルを踏んでいた。まるで宇宙に放り出されるみたいな闇夜だった。
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