親友は熱く語る

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「もちろん美味いさ。だけど、菜っ葉が多くてショーユかけると怒られるんだ。まあそれもひとえに俺の健康を気遣ってくれてるってことで、つまりは愛情表現なわけだ。あいつ素直じゃないからまず怒るんだよ。栄養バランスに気をつけろとか、食べすぎるなとか」 「贅沢な悩みじゃねーか」 「芳野の愛情表現ってどんな感じ? アイツの場合、予想もつかないけど」 「そんなのねえよ」  何もかもがままならない大地はビールをあおる。グラスを持つ右手は真っ白な包帯が巻かれていた。トキオは心配げに目を凝らす。 「大丈夫か? ヒビって結構痛いだろ。ついてねーな」 「車の修理の方が痛い。しばらく運転できねえし」  大地はふたたびビールを流し込んだ。口の中が苦い。  あれは芳野の家からの帰りだった。ようやく自宅近くまで来たところで、飛び出してきた野良猫を避けようとハンドルを切り損ねたのだ。  猫→芳野(イメージ)→やべぇ絶対回避!→ドーン!である。  ぶつけた衝撃で手にヒビが入りギプスで固定されている。利き手ゆえに何かと不自由なので、今は実家に戻っていた。 「びっくりしたよ。久々に飯食いにきたらお前がいるし、包帯してるしさ。事故ったなんて聞いてなかったしさあ。芳野も驚いてたろ?」 「自爆だし、職場にしか言ってない」  大地は目をそらした。トキオはそのぶっきらぼうな態度に疑念を抱きつつも、届いたばかりのから揚げを箸で突き刺した。よほど肉類に飢えていたのか、大ぶりの揚げたてを口の中にいれるや身悶えする。続いてマヨネーズを付けて二個目を頬張った。
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