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「人生、誰しも間違いはあるってことだよ。俺、高校時代から忠告してたじゃん。やっぱ無理だったんだよ」
「ああ゛ぁ?」
「冴に頼んで女の子紹介してもらうか。一度ちゃんと女と付き合ってみろ。芳野との事は勘違いだってわかるから。女の子はいいぞぅ、なんたって可愛くって柔らかくって一緒にいるとすげえ楽しいんだ」
「芳野だって可愛いし、俺はあいつと一緒に居る時が一番楽しいわ」
「そうだろ女の……え?芳野?」
冴との甘いやりとりを思い出し、半笑いで正面を見たトキオは、額に青筋を浮かべた大地にぎくりとした。
「ちょ、お前、まだ血迷ってんの? だって実際うまくいってねえじゃん!」
「血迷ってねーよ! お前、芳野のこと何も知んねえだろうが」
「怒る意味がわかんねえよ! 愛情表現の一つもできねーようなヤツと長く続くわけないだろ。疲れるだけだぞ。やめとけやめとけ!」
激しく手を横に振ったトキオに大地の怒りは頂点に達した。
「うっせえ!! 帰れ!!」
怒鳴り声で、店は静まりかえった。
大地が立ち上がった拍子にビールのグラスが倒れる。テーブルからこぼれた雫が床に落ちていく。トキオが台布巾を探している間に、大地は店を抜けて離れの自室に籠ってしまった。
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