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「なんで俺が怪しいんだよ、会っただろ夏の終わりの同窓会で! 大地と冴のこと相談したろ!」
トキオも必死である。しかしその説明でようやく芳野のメモリーが働いた。よくよく芳野の中でトキオの存在は消されがちのようだ。
「なぜ俺の電話番号を知っている。個人情報を探るのは犯罪じゃないのか」
「お前が自分で同窓会名簿に連絡先の番号書いたんだろ! 幹事だから名簿持ってんだよ」
「そう言えば。だが俺はお前にまったく用事がない。失礼する。バイト先だ」
「待て! あのさ、やっぱこういう事は言っといた方がいいと思って」
「無用だ。友人でもない元同級生からかかってくる電話なんか、怪しげなセールスか勧誘しか思いつかない。どちらにせよお断りだ。それじゃ仕事だから」
「違うって! まず聞けよ、こっちの方が大事だって」
「俺はこの労働を心から大切にしている。少なくともお前の無駄話より」
「大地のことなんだ」
大地と聞いて芳野は顔色を変えた。トキオを怒鳴りつける。
「遅い!! 語れ、早く!!」
「えっ? あの、仕事いいのか」
「どうだっていい! さっさと話せ! お前の話は回りくどくてわかりにくいんだ! 微細漏らさず要点はまとめろ。前ふりの無駄が多すぎる!」
芳野の剣幕に電話の向こうのトキオはたじたじになった。
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