恒例ですが迷子です

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「でも本当に不審者じゃないんだ。大地に聞いてくれればイッパツなんだけど……うーん、芳野君、大地に会いにきたんでしょ。連れて行こうか?」 「断る! こんな夜更けにうろついている人物など信用ならない!」  芳野は自分のことを棚に上げた。  勝谷はやむを得ずポケットから免許証と勝谷商会の名刺を取り出して芳野に見せた。星祭りの企画で大地からも名刺をもらっていたので合わせて差し出す。その名前を目にしてようやく芳野の警戒が緩んだ。  勝谷は正直に言った。 「あのね、駅から来たとしたら大地の家はとっくに通り過ぎてるよ」 芳野の目が衝撃で一回り大きくなる。 「嘘だ! 観測で鍛えた俺の視力で、地上の大きな表札の文字を見落とすなんてありえない」 「大地の実家は飲食店で、表に出てるのは屋号なんだ。裏玄関のポストには名前が書かれてたはずだけど、あえての表札はなかったんじゃないかな。 まさかずっとこの辺りを彷徨ってたの?」 多大なる徒労に同情した勝谷の問いかけに、芳野はこくりと頷いた。 「高校時代、大地が商店街に住んでると話していたから、行けばわかると思って」 「それだけ?! 大雑把すぎるよ、地図のアプリは?」 「アプリは肝心の時に『目的地周辺です』と言っていきなり突き放すからあてにならない。星を見れば大体の方角がわかるから大丈夫だろうと」 「古代の船乗りじゃあるまいし! 誰か人に聞けばよかったのに」 「……通りすがりの他人に声をかけるなんて、そんな高度なコミュニケーションを俺にしろと?!」 勝谷は困り果てて頭を掻いた。
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