最適解にゃ

2/11

267人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
 布団がはだけたままのベッド、およそ勉強の気配がしない学習机。  小学校からの貼りっぱなしの賞状、使い込んだ野球道具。高校時代のまま時を止めていた自分の部屋に芳野が正座している。  うわー……ウソみてえ。  大地はその見慣れない光景に立ち尽くした。 「まあ座れ」  芳野が顎をしゃくって大地を促す。自分の家だというのに、大地はおずおずとそれに従う。狭い部屋なので座布団は一枚しかなく、大地は芳野の向かいになるようにベッドに腰を降ろした。  そのまっすぐな視線に恐れおののきながら質問する。 「……事故のこと、どうして?」 「お前の個人情報はダダ洩れだ。同窓会で幹事をしていた星に興味のない同級生が、事の詳細をぺらぺらと俺にチクった」  トキオのやつ……!  大地は奥歯を噛んだ。未だに名前も覚えてもらえていないうえ、チクり屋扱いの残念さである。大地は今度会ったら締めてやろうと心に決め、笑顔を取り繕った。 「あいつ大袈裟に言ったんじゃねえか? でも大丈夫、全然大したことねえんだ! だからわざわざ言う必要もないと思ったし、連絡できなかったのは仕事が忙しかっただけで、延び延びになってたのは俺がだらしないからだ!」 「それは誤魔化しだ」 芳野はぴしゃりと遮った。 「誤魔化しの気遣いが必要だということは、つまり俺に原因があるということだ」
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

267人が本棚に入れています
本棚に追加