最適解にゃ

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 片手なので手間取ったが、中に指を入れどうにか文書を取り出した。三つ折りになっていた用紙を広げると、思いがけない文字に大地は硬直した。 「……採用通知……?」 「春から、この町の天文台に就職する」 芳野はきっぱりと言った。大地は通知を手にしたまま声を荒げた。 「嘘だろ、だってお前」 「嘘じゃない。お前が天文台で人を募集してるって言っているのを聞いてからずっと考えていた。覚えているかわからないが、お前に来るなと連絡していた週はこっちで面接で、お前が怒って出て行った週は合否の連絡待ちだった。準備でごたついてるらしくて実際に採用通知を受けたのはあれから二週間も経ってからだったが」 「あの時……」  当然覚えている。珍しく芳野から電話がきたと思えば、絶対に来るなと言われ、翌週、待ちわびて駆けつけたら芳野は上の空だった。それが寂しくていじけたようなものである。町のプロジェクト関連は同時進行でバタバタしているため採用試験も発表まで余計に時間がかかったのだろう。  大地は呆然としたまま言った。 「けど……だってお前、大学院の院試受かってたじゃねーか。でっかい望遠鏡で研究したいってわざわざ遠くのあの大学選んで、そのままずっとお前みたいな星馬鹿の教授のとこで研究するって言ってただろ」 「鬼塚教授とはきちんと話をした。合格も辞退した」 「辞退したのかよ!」 大地は二の句が継げなかった。芳野は依然としてきりりとしたまま大地を見返した。 「星はどこにいても見られる。でも大地はここにしかいない」  大地はとっさに唇を噛んだ。いきなり泣きそうだったからだ。
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