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大地は芳野の確かな意思表示を受け、猛烈なる感激の嵐のなかにいた。
______と、同時に。
あああああ、抱きしめてえ!!
そんでキスして、脱がして一気に押し倒してえ!!
健全なる肉体からは大量の欲情フェロモンが、この祝賀ムードを受けて一気に溢れ出ようとしていた。
芳野不足で数週間、大地の体はガツガツに飢えている。その真横に健気な決意をした芳野。言うべきことを言ってほっとしたのか、いつになくしおらしい。
これは奇跡の瞬間だ。
大地はごくりと唾を飲んだ。ご存じだろうか。野良の猫というのはまず容易に触らせない。それどころか近寄っただけでシャー!(威嚇)からのダーッ!(逃亡)である。
出会いから今日に至るまで、どれだけ大地は芳野のその野良猫体質に悩まされてきたことか。高校時代、毎日ともに下校してようやく馴らしたと思ったら、進学で物理的に引き離される遠距離恋愛。それでも根気よく通い詰めたが、対人スキルの乏しい芳野の人対人の距離感覚が絶望的に遠い。第一形態、第二形態と、形を変えては現れるラスボスのように距離問題には泣かさ続けてきた。
それが、今!
芳野が自分で隣りにやってきて『ぴとっ』とした!
自らの『ぴとっ』!!
感激で涙がこぼれそうだった。しかし泣いている場合ではない。大地はじりっとお尻の位置をずらし、さらに芳野との密着を深めた。
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