最適解にゃ

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「俺、すげえ会いたかった」 「ん」  芳野の体温でマシュマロのような柔肌がちらつき、さっそくにも腰が疼いた。大地の体は着々と準備を整えつつある。  おそらく俺と芳野の気持ちの盛り上がりは、これまでの長い付き合いの中で、今まさに最高潮を迎えようとしている。  ぷふーっと鼻息が漏れた。あまりに息遣いが荒くなると警戒されるので、酸素の出し入れにも神経を使う。ここからが肝心のところだ。大地はキメ顔で言った。 「俺んちよくわかったな。迷わなかったか」 「大丈夫だ。迷ったが勝谷さんという好人物が親切に教えてくれた」  パイセン、あざーっす!!  一生の恩人として大地の中に勝谷の存在が刻まれる。勝谷の発見がなければ今ごろ芳野はまだ町内を彷徨っていただろう。 「芳野……俺すげえ嬉しい」 「うん」  うつむいた芳野から照れたような恥じらいを感じる。それは僅かすぎる恋のニュアンス。だが、芳野の取り扱いに熟練している大地はこの微小なサインを見逃したりしない。  大地は確信した。これはイケる。これまでは事に及ぼうとすると、芳野から殺気とまごうような緊迫感が漂ってきたが、今日の芳野は雰囲気が優しい。  そろりと右手を持ち上げた。いざ芳野の顎に手をかけ……ようとして、手を伸ばした途端、肘まで走りぬける痛みで青ざめた。  痛恨のミス!!  なんだって俺はこんな時に手にヒビなんか入れてんだ!!  超絶テクで芳野を天国に連れていくはずがロクに力も入らねえ……!!
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