なんやかんやで春になり

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 大地の部屋に客布団を敷き、横になった芳野は、とたんにうつらうつらし始めた。  だが、対する大地はギンギンに目覚めている。  何しろ禁断症状が出そうなほど会いたかった芳野が目の前で据え膳状態なのである。しかし実家の壁は薄く、世話焼きの家族たちは油断ならない。片手を使えないペナルティもある。  今ではない……  大地は生唾をのみつつ苦渋の決断をした。ベッドに正座したまま、ぽんぽこのお腹で大の字になった芳野を見下ろす。  今ではない……繰り返し自らに言い聞かせるが、欲望を寸止めされた分、気持ちがとめどもなくあふれしまう。うっとおしいほどの芳野愛が炸裂し、脳内語りが止まらない。  あああ可愛いなんて可愛い。すげえ触りてえ、撫でたい、マジでつらい。地上に舞い降りた天使か。存在自体が夢の玉手箱か。見ろ、心許し切ったこの顔、それがつまり愛情表現ってことだ。こちとら好きとか嫌いとか言ってる次元じゃねえのよ。わかるかトキオ。いやこうなったのはアイツのおかげでもあるからな。今度チャーハン奢るわ。そんで芳野の良さを語って聞かせ……いやいや駄目ダメ、こんなに可愛いなんて誰にも言えねえ。他のヤツに知られたら大変だ。てか、天文台の仕事なんて不特定多数の出会いがあんのに大丈夫か。上司だの同僚だのに惚れられたりしねえだろうな。客が芳野目当てに通い詰めたりするんじゃねえのか。ネットとかで天文台に星だけにスター降臨とか騒ぎになるかもしんねえ、やべえ、そしたらあっという間の全国区だ。町興しとしては良いかもしれねえが俺の芳野を売り渡すわけにはいかねえ、これは困った…… 芳野への愛おしさが頭の中でスパークする。これ以上離れたくないという強い想いで息が苦しい。その想いが頂点に達した時、大地は意を決して口火を切った。
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