今日も迷ってます

4/5

267人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
 高校生の頃、一緒に帰るようになってしばらくして、大地が来なかったことがある。細かい約束をしていたわけじゃないから、芳野は一人で帰った。  それまでずっと一人が当たり前だったくせに、その帰り道は自分でも驚くほどつまらなかった。  二人で歩く河原にさしかかって、芳野はたまらず斜面に腰を降ろした。  いつも星さえ見れば何もかも忘れられるのに、空を見上げても星が目に入ってこない。そのままじっとして星が輝きを増す頃、ようやく大地が走ってきた。 『芳野! 悪ぃ、久しぶりに野球部の連中につかまっちって』 長い手足で三段跳びでもするように駆け寄ってきた大地は、芳野を見ると嬉しそうに笑った。  大地はいつもそうだ。芳野を見つけるとこの上なく明るく笑う。そして自分もきっと、おなじぐらい気持ちが弾んでいるのだろう。 c5a50536-c630-4efa-8005-8e763c2c73e1 ※鳴さま製作裏話 https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=251
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

267人が本棚に入れています
本棚に追加