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ベッドに仰向けに寝かされたとき、芳野は大きく息を吸い込んだ。
大地がちぎるようにパジャマを脱いで床に落とす。ベッドのスプリングがギシリと沈むのと同時に、筋肉質の分厚い体が覆いかぶさってきた。
「芳野」
素肌がぴったり重なる。
上気した皮膚の感覚だけで、お互いが欲情していることがわかった。下半身に大地のものがあたる。改めて感じるその存在感に芳野は口ごもった。
「あの……一応、俺なりに努力はしたが、やっぱりこのサイズは無理なんじゃないのか」
「努力?」
「少しでも成長すれば受入れやすくなるんじゃないかと思って、牛乳をできる限り飲んでいたんだが」
「まさか今さら育つつもりだったのか? ちっこいまんまで大丈夫だ」
「それはそっちの理屈だ。釣り合いってものがある。お前は勝手にスーツが似合う社会人になってしまうし、体はでかいし、俺だって男なのに全部が未熟というのは我慢ならない」
「そんで俺がスーツで会いにいくと目合わせてくんなかったの? 可っ愛いいなあ」
大地は笑って芳野を抱きしめた。芳野は苦い顔をする。
「俺は本気で取り組んでいたんだ」
「でも俺もうガチガチだ。育つの待てねえや。入れねえとおさまんない」
大地の動作は一つ一つが力強い。強引ではないけれども、腕をつかむのも、シーツに体を押し付けるのも、抗ってもものともしない力の差があった。
「俺がどんだけ待ってたかわかる?」
瞬きの気配すら感じる近さで、大地の瞳が芳野を覗き込んだ。
ふいに、高校生の終わりに離れたくないと泣かれたことを思い出した。そうしたら大学のアパートの前で待ちぼうけで立っている姿や、待ち合わせの喫茶店や、芳野を探して走ってきた必死の顔までが次々と思い出された。
「どんだけ好きかもわかってんだろ。諦められるか」
「……うん」
俺も本当は、いつかこの腕に捕まることを待っていたのかもしれない。
口にできなかった代わりに、芳野は体の力をゆるめた。大地が芳野の首筋に顔を埋めてしみじみと言う。
「芳野って触ってるだけですげえ気持ちいいのな」
「俺の? どこが」
「全部だ。だからもっと触らせて」
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