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頬の輪郭を撫でられ、唇が重ねられた。
これまでとはくらべものにならない深いキスだった。芳野は合間に息をするだけで精一杯だった。裸で抱きあっていると、動くたびに肌が擦れて、腰が気だるい熱を帯びてくる。
「……芳野、いい?」
逃げ出したいぐらい恥ずかしかったが、同時に大地に全部を犯されたらどうなるのか知りたい気持ちもあった。別な個である二人が重なり、体の中のか弱い部分への侵入を許したら、どれだけ密になれるのだろう。
体の中を他者に許すなんて本当は指一本ですら怖い。
大地はぬるぬるに濡らした指で深く広く慣らしていく。風呂場の時よりいくぶん早く指を増やされ、潜った指先で体の内側を探られた。
芳野は吐息を漏らした。激しい異物感と圧。だが、擦られているうちに甘い疼きも下肢に広がっていく。
「大地」
芳野は目を開けた。大地の顔は真上にあった。もう逃げることは叶わないのだとわかった。
「ぜんぶ任せる」
「おう、任せろ」
「こ……これからも」
大地は目を見開いた。
日に焼けた肌も、強い眼差しも、まっすぐな鼻梁も少し厚みのある唇も、筋肉の束みたいな太い首も、ぜんぶ好きだった。その『好き』がきっと芳野の表情から滲み出るのだろう、大地は笑み崩れた。
ずるっと指が抜かれ、大地が芳野の膝を掴んだ。折り曲げられた足が体にくっつきそうになる。嫌だ、と言いそうになって唇を噛んだ。嫌というのは不適切だった。大地も、大地とすることも嫌なわけじゃない、ただ生理的な恐怖だった。
「ちょっと我慢な」
あてがった先がぐいぐい入口を突いてくる。指とは比較にならない大きさに芳野は顔をゆがめた。
「痛てえか? まだ入ってもねーぞ」
「大、丈夫」
「ふ……さすがにきっつい」
大地も汗ばんでいた。しかし今日は遠慮しなかった。腰を密着させ、ぐっとねじこんでくる。
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