274人が本棚に入れています
本棚に追加
「勝っちゃん、この子はままやの三男坊のハニーの学友じゃ。姓は佐倉、名は旭」「え?友達? 大地のとこの芳野君の?」
ズバリ名前を言われ、佐倉は驚愕した。自分のみならず大地と芳野のことまで知っている。衝撃で硬直していると、さらに二人目の爺様が断定した。
「我らの調査では、友達であると同時に片思いもしていた相手じゃ。しかし全力で恋して敗れるは男の勲章、生きていればそういう日もある。泣くもよかろう」「え、失恋? 芳野君に?」
佐倉は呆然とした。ひた隠しにしていた恋心までばれている。しかも昨夜の玉砕までもだ。超プライベートな情報のはずなのにどうして筒抜けなのか。そのわかりやい疑問の表情に応えるように三人目の爺様が微笑んだ。
「ふふふ、この程度のことは朝飯前。ワシらは町の便利屋・勝谷商会のお抱え諜報員。あらゆる情報に精通し破壊工作から再生指南まで自由自在のスーパーエージェントなのじゃから!」
キメキメの台詞に三人はしたり顔で頷いたが、勝谷は心底困り果てたように突っ込んだ。
「爺ちゃん、いつも俺言ってるよな。誤解を招く言い方はやめろって。エージェントじゃなくて契約社員だし、うちの仕事は破壊工作じゃなくて人助けだ」
佐倉は後ずさった。さっきまでどっぷりと恋愛モードだったのに、いきなり世界がアクション映画にチェンジしてしまった気がした。
しかし実際、三爺はその世界の住人だったのでこればかりは致し方ない。
(その詳細は拙作『戸惑いの夏』https://estar.jp/novels/25078863にて15万字もかけて説明しているので割愛。)
最初のコメントを投稿しよう!